Collection Summer 2024

二〇二四 な つ

あとがき

このたび、デニム製品を全面的に見直すことにしました。これほど大がかりなリニューアルは、創業以来初めてのことです。テーマは「日本のデニム」。私たちが九〇年代初めにオリジナルのデニム製品を作りはじめたとき、アメリカはもとより、どこの国でも「デニム=ワークウェア」でした。その既成概念を少しずつ崩し、広げ、日々の生活のさまざまな場面にふさわしいデニムを作ってきたのは45R、との自負もあります。日本の一ブランドである私たちが、世界のデニムの歴史において、一歩でもそれを先に進めることができたら、こんな嬉しいことはありません。
 デニムの「顔」は後ろ側──誰かに学んだわけでもなく、ずっと私たちはそう思ってきました。もしかすると、着物の帯や、印半纏の背文様など、伝統的な「後ろ姿の美学」にもとづく感性だったのかもしれません。素材、染め、かたちと、あらゆる角度から見直し作業を進めるなかで、やはり力が入ったのは、ポケット、ソーバー、そして「R」刺繍など、デニムの「後ろ」の意匠でした。
 たとえばソーバーはアイテムごとに変えています。素材も革だけでなく、藍染のデニムには刺子技法で「有(アール)」という字をかたどったり、レディースには飛天(天女)の姿をプリントしたり。そして、全製品に必ず入れる「R」刺繍は、私たちにとって「家紋」のように大事なものです。刺繍糸はすべて藍染や草木染で、かたちや色もお仕着せにせず、アイテムごとに変えています。桜で染めた「R」もあり、ピンクの色がきよらかで、心はずむ思いがします。
橋慎志